美術の世界◇遊びをせむとや生まれけむ -サンパウロ便り
こんにちは、乃里子 Ivoryです。
今日は、日本出身の一人の美術家を訪ね、
その世界から私の住む街を紹介します。
『遊びをせむとや生まれけむ』
これは、私が人生のあり方として
私がこれまで目指してきた世界観、
もっとも私にしっくりくるフレーズです。
出典の「梁塵秘抄」には
学校時代に教科書でふれただけですが
半世紀以上絶った今も私は
この一節と共に生きている気がします。
「この人生をあそび、体験するために私は生まれてきた」
*
訪ねるたびに、私にこの生き方を
思い出させてくださる導き手、
それは、ブラジルで活躍を続ける画家
先頃、ブラジル日本文化協会で開かれた
陽気なアート展に氏を訪ねました。
若き日に日本を出て、サンパウロにて
現代アートや陶芸の世界で活動を続ける
美術工芸家は驚くほどたくさんおられます。
そのなかでもKen Kanekoさんは、
詩人、俳優としてのキャリアも長く
芝居の世界では近々、楽しい役柄で活躍されると聞いています。
*
この日はKen Kanekoさんの
コレクションの一部にふれ、
とびきり楽しいお話をうかがいました。
年齢を重ねるごとに
まるで幼子のようであり、
新しい創作を楽しむ姿には
いつも心を打たれます。
上の作品はこの日、アート展の会場から私とともに
わが家にやってきてくれました。
画材は何だとおもいますか?
ブラジルの土で描かれているんです!
このアイディアと手法は、
80代の一番最後に差しかかったKenさんの
2025年に新たに開かれた世界のひとつです。
このアーティスティックなノートにも
のびやかな世界が広がっていますね。
毎日一行ずつ綴られるそうです。
その心境をお話しくださるKenさんは
まるでわらべのようににこやかでした。
「今日は何を書こうかな」
ここに開かれた「せ」のページでは
「せ」で始まるこの日のひとことが
愉しみをもってほほえみかけていました。
せのびする心にそむきたけちじむ老
こころはますます広やかに、
あそびの世界も軽やかに、
お腹の底から生を謳い、
そして体だけが少しばかり縮んで……
そんなこんなを
すべてまる~くひっくるめて
「愉快、愉快」と遊んでおられるようでした。
*
冒頭で
多くの日本出身の芸術家による
サンパウロ美術界での功績について書きましたが
美術工芸展、そしてこうした
日本とブラジルを繋ぐアート市(いち)の会場では
老若の作家さんたちが私たちに
素敵な世界を見せてくれていました。
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